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未来を見据えて伝えたい「食」にまつわる5つの物語

食の未来を明るくする取り組みの地
宇和島を訪ねて
   〜作り手のこだわりや思いを繋ぐ〜

食べてくださる方が、水産物にかかわる人が、
幸せになるために。
豊かな宇和海の宝を未来に繋ぎたい。
〜株式会社 宇和島プロジェクト〜

株式会社 宇和島プロジェクト
創業者は、木和田権一。宇和海の漁船漁業者や養殖業者の安定した経営のために、販売チャネルの開発、商品開発や加工技術の向上、ブランドの価値向上に取り組み、地産地消の推進と地域での職域作り、海外への輸出促進にも力を注ぐ。漁協内で2004年に“宇和島漁協プロジェクト”を組織して活動をスタート。2010年、本格的なビジネスを目指し漁協から独立。2012年“みかんブリ”、2013年“みかん鯛”、2014年“宇和島サーモン”が誕生。2015年『フード・アクション・ニッポン アワード』受賞(農林水産省)※1
2016年『第4回グッドライフアワード』受賞(環境省)※2

※1『フード・アクション・ニッポン アワード』:主催は農林水産省。
国産農林水産物の消費拡大を目的に、平成21年度スタート。
毎年、日本全国の産品を発掘し、表彰を行っています。  
※2『グッドライフアワード』:主催は環境省。環境にやさしい社会の実現を目指し、
環境と社会によい暮らしに関わる取組を表彰。ライフスタイルを見直す
きっかけになることを目指しています。

竹林 豊 
阪急うめだ本店 
生鮮バイヤー生鮮担当歴12年

中田力夫(なかた りきお)(有)中田水産 代表取締役 
昭和38年創業、中田水産の3代目

石﨑崇仁(いしざき たかひと)
株式会社 宇和島プロジェクト 専務取締役 
プロジェクト発足当時から活動。

 宇和海は、愛媛県と大分県に挟まれた豊かな漁場。“宇和島プロジェクト”は、魚の販売の仕組みを考えないと、漁業の担い手が減ってしまう、という危機感から2010年正式にスタート。流通はもちろん、お客様に喜んでいただくために、水産物の付加価値を上げることを重視しました。
 その取り組みのひとつ“みかん魚”が農林水産省が主催する『フード・アクション・ニッポン アワード2015』に選ばれ、広く知られるようになりました。今回は、宇和島プロジェクトの専務、石﨑さんといっしょに“みかん魚”の養殖に取り組む、有限会社 中田水産を訪ねました。

竹林:宇和島、ええところですね。大阪からは、近いようで遠い(笑)。「宇和島プロジェクト」は“みかん魚”の養殖で『フード・アクション・ニッポン アワード』で表彰されたのを機に、知るようになりました。

石﨑:ようこそ、おいでくださいました。今日は“みかん鯛”を養殖している「中田水産」へご案内します。その前に愛媛県の養殖鯛の歴史を簡単に説明させてください。昔は、手漕船で鯛を獲っていましたが、機船を使っての底引き網で獲るようになり、鯛が減ってしまい、漁獲量を規制されるようになりました。これを機に“育てる漁業”へと舵がきられたのです。愛媛県では、昭和37年(1962年)に養殖が始まり、平成2年(1990年)には、養殖鯛の漁獲高が全国で1位になり、現在も1位を守っています。平成5年(1993年)に、真鯛が愛媛県の県魚にもなりました。

竹林:そうなんですか。鯛の養殖の歴史も長いのですね。そこから“みかん魚”を作られるようになったきっかけを教えてください。

石﨑:“みかん魚”は、愛媛の魚に付加価値を!という思いで、愛媛県水産研究センターで2009年から開発がスタート。フルーツに含まれるポリフェノールをいかして、鯛本来の生臭さを抑え、鮮度を長持ちさせる魚を育てようという試みです。愛媛県のフルーツといえばみかん。そのジュースなどの搾りかす(※以降みかんの皮)には、ポリフェノールだけではなく、自然由来の爽やかな香りの成分“リモネン”が含まれています。

これをエサに混ぜたところ、爽やかな風味のブリが誕生しました。開発当初から熱心に取り組んでくださったのが、中田水産の中田力夫さんです。
竹林:中田さん、よろしくお願いいたします。開発に取り組まれた思い、工夫された点を教えてください。

中田:よろしくお願いいたします。うちは昭和38年から宇和海で養殖に携わってきました。私で3代目です。魚離れが進んでいることが気がかりだったところへいただいた話。あらためて魚に興味を持ってもらえるチャンス、ぜひ、おいしい“みかん魚”を作りたい!と思ったのです。実際には、エサにみかんの皮を入れすぎて、ブリがやせてしまったこともありました。季節によってブリの食欲も変わってくるので加減が難しいのです。試行錯誤を繰り返して、“みかんブリ”ができたのが、2012年です。

体長によって鯛の口の
大きさが違うため
鯛それぞれの大きさに
合わせたエサ。 中田さんの船の
エンジン音で、
鯛が集まります

竹林:ブリが成功して、鯛になるんですね。鯛へ取り組むきっかけを教えてください。

石﨑:“みかんブリ”がすぐ売れたわけではありません。販売店からのアンケートの結果が思わしくありませんでした。手応えがあったのは、大手回転寿司チェーン。スタッフの試食会で好評を得て、メニューになり、お客様からもおいしい!の声をいただいたことから、寿司ネタとして人気の“鯛”はできないか?とリクエストをいただいたのです。

竹林:うれしいですね。リクエストからの“みかん鯛”開発。ブリとの違いや工夫された点を教えてください。

中田:ブリは、1年半で約4kgになり出荷できます。鯛は、出荷基準の2kgになるのに、2年5ヵ月くらいかかるので、愛情をかける時間が違います。エサは、イワシが半分、みかん皮を入れた配合飼料が半分。新鮮なエサを食べさせたいので、国産の新鮮な冷凍イワシを入れ、その日にあげる分を毎日作ります。それから日焼けにも気を使っています。鯛はもともと深海を泳ぐものなので、養殖の生簀(縦12m、横10m、深さ10m)では浅すぎます。なので日よけネットをかけて、日焼けを防いでいるのです。それから、美しさと鮮度が長持ちするように、背骨に沿って針金を入れる特別な神経締めも忘れません。

竹林:まるで、お母さんのようですね。愛情がたっぷり。そうすることで、新鮮で美味しくみかんの風味も長持ちするということですね。ぜひ、阪急に来てくださった時は、おいしい食べ方も教えてください。

国産の新鮮な冷凍イワシを
エサに混ぜます。

数匹ずつ追水揚げし、鯛同士で
傷つかないようにしています。

宇和島名物の鯛めしは、鯛の刺身をご飯に
のせ、生卵と出汁でいただく贅沢な味。「まぐろ 寺本」みかん鯛めしセット(1パック 1人前)698円
◎地下2階 生鮮売場「まぐろ 寺本」

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