Special Edition

本場徳島で藍の美しさに迫る。
行方ひさこの藍ism体験記

Special Edition

2019.6.11

ブランディングディレクターの行方ひさこが、伝統の阿波藍染で新たな魅力を作り出す「Awagami Factory(アワガミファクトリー)」の工房を訪問。藍染の体験や職人との会話を通じて、現代の暮らしの中でスパイスとして輝きを放つ“藍ism”を発信。

藍染和紙を使って、モダンなアートやプロダクトを
徳島「Awagami Factory(アワガミファクトリー)

徳島県では、約1300年前より和紙の製造が始まったと言われています。「アワガミファクトリー」は、8代にわたり和紙の製造を続けている工房です。

この工房では、昔ながらの製造方法をなくさないために、今でも手作りで和紙の製造が行われています。機械だと何千倍も一度に生産できますが、こうして昔ながらの製造過程を実際に見学でき、体験できる取り組みを続けている、その姿勢が本当に素晴らしい。
ここでは、誰でも和紙を作れる体験プランがあります。私も、初めましての和紙づくりを体験させていただきました。詳細は書きませんが、ぜひ体験していただきたいです。

そして、素敵なギャラリーには数々の作品たちが飾られています。
アーティストやデザイナーとの交流を通じて、国際的なクリエーター達に和紙を広めていけたら、と現代のニーズに合わせた伝統的な和紙づくりに力を入れているそう。ギャラリースペースだけでなく、工房中にふと目を引く作品たちがたくさんありました。

さらに、「アワガミファクトリー」では他にはあまり例を見ない藍染和紙の製作も。専門とされている染師の藤森美恵子さんにお話をお伺いしながら、工程を見せていただきました。

美恵子さんは、「アワガミファクトリー」を営む藤森家に嫁いできて、紙づくりの現場をずっと縁の下で支えてきました。義母のツネさんの手伝いをしながら、 本格的に藍染和紙に取り組み、さまざまな技術を学んだそう。

1) 耐水性を持たせるためこんにゃく糊を両面に塗布し、染色前に充分に水に浸す。
2) 吊り具に吊るし、ロープでゆっくり昇降させながら藍瓶に紙を浸して染色。
3) 紙がすべて染液に浸ったら、色の濃淡や柄に合わせてタイマーで浸す時間を計る。
4) 時間になったらロープを引き上げ、水洗いしてアクを落とす。

和紙の染色はこの4つの工程を行っていきます。
布の染色とそんなに変わらないのですが、染めているうちに和紙の耐久性が不安になったら、こんにゃく糊を塗り、乾かしてから染めに戻ります。和紙と対話しながらの、なかなか根気のいる作業です。
「水に濡れている時の和紙が一番美しいの。」と美恵子さん。私も、水の中で泳ぐなんとも言えない奥深い藍色の和紙に惹きこまれました。

今回は特別にご自宅にもお伺いし、美恵子さんの義母であるツネさんの作品も拝見しました。これらは、もちろん同じものは2つと作れない、唯一無二のものです。重なり合う美しい藍色のグラデーションにすっかり魅入ってしまいました。

伝統的な和紙は、マテリアルとして価値の高いものだと思います。さらに多くのクリエーターと上手く組み、アート作品だけでなく、文具やインテリアなどのプロダクトデザインも、現在の私たち暮らしにフィットしたものがもっと作れたら、と制作意欲が掻き立てられました。

私が一番心を打たれたのは、姿勢です。「全ての工程を自分たちで行えるように、裏庭に和紙の原料となる楮(こうぞ)の木を植えました。全てが国内産では賄えないのが現状ですが、楮を育てていくことで全て国産の取り組みがしたいんです。」と、代表理事の藤森さんが嬉しそうに楮の写真を見せてくださいました。

手染めで造られた美しく唯一無二の作品

今回訪れた藍にまつわるブランドは、顔の見える材料調達という過程から始まり、藍を、そして阿波を大切にするという気持ちに溢れていました。

手漉き和紙を染めてモダンなインテリアに。
徳島「Awagami Factory(アワガミファクトリー)」和紙アートパネル

伝統工芸は、新たな表現の可能性を求めてアップデートしていかないと時代とマッチしなくなってしまうことも多く、継承の難しいところでもあり課題点であるといつも思います。今回、実際に訪れてみてお話を伺ううちに、後ろを見ながら未来に向かって歩いている、そんな歴史を大切にしながら挑戦を掛け合わせた絶妙なバランスを保っているように感じました。

今ある伝統は、その時代にはきっとモダンアートだったはずです。私は、私たちが伝統を受け継いでいくと言うことは生命力であり、その業だと考えています。一朝一夕には得難い、貴重で尊い伝統継承を担い、未来に繋げていくということはひとつの芸術の形だと思うのです。
合成されたものとは異なり、藍染は製造工程に非常に時間と労力と工夫を要すものです。手染めで造られた美しく唯一無二の作品の需要は常にあると思います。
なぜなら私は、そうした作品を身近に置くことや繋いでいこうとする志が、私たちの生活を本質から豊かにしてくれると信じているからです。
(文:行方ひさこ)

Profile
ブランディングディレクター 行方ひさこ

最も価値のある資産となる、“ブランド”価値を高めるコンセプトメイクを行う。アパレルカンパニーの経営や、デザイナーの経験を生かし、スポーツ、ビューティー、工芸など幅広い分野で活動中。ニュートラルなマインドで、ターゲットに届けるコミュニケーションの仕組みをつくっている。

Information
藍ism~日本の青と暮らす~

◎6月12日(水)~17日(月)
◎9階 祝祭広場
“ジャパンブルー”として世界にも通ずる藍。その藍をモダナイズした、ファッションやインテリアを幅広くご紹介。6月12日(水)には、行方ひさこの来店イベントも。

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