1821年、フランス東部メス(Metz)でピエール=ポール・ヴェヴェールにより創業した「VEVER(ヴェヴェール)」は、200年を超える歴史を持つフランスのハイジュエリーメゾン。1872年にはパリのラ・ペ通りへ拠点を移し、19世紀末から20世紀初頭にかけて、世界で最も象徴的なジュエリーメゾンのひとつとして名を馳せました。
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ヴェヴェール、14 rue de la Paix、1917年頃
1889年から1925年までの万国博覧会では5つのグランプリを受賞。宝石そのものの価値だけではなく、素材、色彩、フォルム、自然の造形に美を見出すその革新性は、アール・ヌーヴォー期のジュエリーを芸術の領域へと押し上げました。角、ガラス、エナメル、象牙などを用い、芸術的・美的価値を重視した当時の作品は、「モダンジュエリー」と称されています。
左)「シルヴィア」ヴェヴェール作ペンダント、1900年頃、金、瑪瑙、ルビー、ダイヤモンド、エナメル、パリ装飾美術館所蔵
右)「シクラメン」の櫛、ヴィーバー、1900年頃、オパールの斑点のある象牙の葉、半透明のエナメルの花、装飾芸術美術館、パリ
ブランドの現代における再始動を導いたのは、第7代継承者であるカミーユ・ヴェヴェールとダミアン・ヴェヴェール。カミーユは15歳の頃に祖母から「VEVER」のジュエリーを贈られたことをきっかけに、メゾンの歴史と遺産に深く惹かれ、ブランドの再始動を決意しました。クリエイティブには、元カルティエのクリエイティブ・ディレクターであるサンドリーヌ・ドゥ・ラージュを迎え、アール・ヌーヴォーと日本文化からインスピレーションを得たコレクションを展開しています。
「VEVER」の歴史を語るうえで欠かせないのが、第3世代アンリ・ヴェヴェールの存在です。アンリは1875年にジュエリー協会の会長を務め、19世紀フランス・ジュエリーに関する3巻の著書を残しました。この著作は、現在もなお歴史家やジュエリーブランドに参照される、フランス・ジュエリー界の“バイブル”とされています。
また、後にアール・ヌーヴォーを代表する存在となるルネ・ラリックは、キャリア初期に「VEVER」のもとで学び、1889年の万国博覧会では「VEVER」のためにジュエリーをデザインしました。ラリックによる桜のコサージュ・ブローチや、アンリの娘マルグリットのために制作されたデイジーのパリュールは、「VEVER」とラリックの創造的な対話を象徴する作品として知られています。
左)桜のコサージュ ブローチ、ラリック フォー ヴェヴェール、1900年頃
右)デイジーのブローチとイヤリングのセット、マルグリット・ヴェヴェールのためのラリック、1894年
「歌う鳥」のブローチ、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、ルビー、ルネ・ラリック『ヴェヴェール』1889年頃
「VEVER」は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランス大統領、ロシア皇后、イラン国王、女優サラ・ベルナールをはじめ、各国の王侯貴族や文化人を顧客に持ちました。日本との関係も深く、パリで日本美術を紹介した林忠正を通じて、日本の初代首相である伊藤博文をはじめ、徳川家、鍋島家、細川家など、歴史ある顧客との交流を育んでいます。阪急うめだ本店での日本初の直営POP-UPは、「VEVER」が長きにわたり育んできた日本との文化的対話を、現代へとつなぐ新たな一章となります。
2024年には、メゾンの復興と現代的な取り組みが評価され、フランス・ジュエリー部門における「Palme d’Or」を受賞。現代では、アナ・ウィンターがメットガラで「VEVER」のジュエリーを着用するなど、その存在感は新たな世代にも広がっています。200年の歴史を受け継ぎながら、「VEVER」は今、未来へ向けたフランス・ジュエリーの新しい章を刻んでいます。
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JAPONISME, SAVOIR-FAIRE AND RESPONSIBLE LUXURY
日本美術との深い対話から生まれた、「VEVER」の美意識
「VEVER」と日本の結びつきは、単なるインスピレーションにとどまりません。第3世代アンリ・ヴェヴェールは日本文化を深く愛し、自身の作品にその美意識を取り入れるだけでなく、フランスにおける日本美術の発展にも大きく貢献しました。
アンリは、浮世絵、印籠、刀の鍔などの熱心な収集家であり、日本国外で最大規模の日本版画コレクターのひとりでもありました。そのコレクションの多くは、後にルーブル美術館や東京の美術館へ寄贈され、フランスにおいて日本文化が美術史の中で認知される重要な契機となりました。
1892年以降、アンリはパリで日本美術愛好家たちが集う月例ディナー“Diner des amis de l'Art Japonais”に参加。クロード・モネをはじめとする芸術家やコレクターたちとともに、ジャポニスムの文化的交流を育みました。また、1900年には日仏協会の評議員にも名を連ねています。
彼が日本美術に見出したのは、異国趣味としての装飾ではありません。自然との直接的なつながり、植物や動物が持つ有機的な線、浮世絵に見られる独特の色彩感覚、そして余白を含んだ詩的な構図。それらは「VEVER」のアール・ヌーヴォーのDNAに深く刻まれ、エナメル技法や植物モチーフを通じて、現在のコレクションにも受け継がれています。
左)2024年フランス宝飾品部門パルムドール
右)イチョウの指輪、ラージサイズ、ゴールド、ダイヤモンド、レッド透明エナメル
なかでもGinkgo(イチョウ)は、「VEVER」を象徴するモチーフのひとつです。アンリが自身のジュエリーに取り入れていたイチョウの葉は、永遠、再生、レジリエンスを想起させる植物として、現代の「VEVER」においても重要な位置を占めています。
現在のコレクションの中心をなすGinkgoは、3枚の葉が重なり合い、一輪の花のように立ち上がるデザイン。手作業によるマットなゴールドのテクスチャー、花冠のような独自のセッティング、そしてダイヤモンドの繊細な輝きが、肌の上に静かな生命力を宿します。リング、ネックレス、イヤリングへと展開されるその造形は、200年のヘリテージと現代のサヴォアフェールを結ぶ、「VEVER」の現在を象徴するものです。
イチョウのモチーフのリング、ラージサイズ、18金、ダイヤモンド(0.23カラット)
受け継がれるサヴォアフェールと、責任あるラグジュアリー
現代の「VEVER」は、100%フランス製にこだわり、卓越した職人技と責任あるものづくりを両立させています。ジュエリーには18Kリサイクルゴールド、トレーサブルな天然ダイヤモンドを使用。2021年からは、社会的使命を持つ企業「Entreprise à mission」として、ヘリテージの継承と同時に、人と自然を尊重する新しいラグジュアリーのあり方を提示しています。
制作は、プラス・ヴァンドームをはじめとするフランス最高峰の職人たちの手によって行われます。花冠のような独自のセッティング、手作業による繊細なテクスチャー、そして「プリカジュール」や「グラン・フー」といった高度なエナメル技法は、「VEVER」のサヴォアフェールを象徴するもの。現代のコレクションでも、フランスの国家最優秀職人章であるMOFを受章した職人たちとともに、複雑で希少な伝統技法を守り続けています。
「VEVER」のジュエリーは、過去の再現ではなく、継承された美意識を現代に生かすものです。アール・ヌーヴォー、日本美術、自然へのまなざし、そして素材や製造への誠実な姿勢。200年の時を超えて受け継がれてきたメゾンの精神は、今、阪急うめだ本店での日本初直営POP-UPを通じて、日本との新たな対話を始めます。
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