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2023.2.17

シェラトンの一角で農業！？「地域の交流の場」となる都市農園の魅力。【前編】

[まちの元気をつくるひと] [ローカルSDG’s] [街のストーリー] [食]
2023.02.17

海と山が近く大都市にいながら自然を身近に感じられる神戸。そんな神戸の中心部である三宮で全館リニューアル中の神戸阪急では、モノの情報発信だけではなく、神戸の人の暮らしをイメージして、神戸の人がわくわくするようなライフスタイルを提案する売り場をオープン予定です。今回は、その売り場の企画担当である川畑が神戸の街に出かけていき「神戸阪急のWEBマガジンRerere」の編集部と共に、暮らしを楽しんでいる方たちにお話をお聞きしました。お伺いしたのは六甲アイランドにある建物の屋上を活用した都市農園「シェラトンファーム」。その運営を通じて参加者や近隣の方の交流の場づくりをしている事務局兼コミュニティマネージャーの江副さんと利用者の櫻井さんです。

大改装中の神戸阪急に、緑あふれる憩いの場があったら。

川畑

神戸阪急では前身であるそごう神戸店から引き継ぎ、約20年ぶりの全館リニューアル中です。「神戸阪急ではない、神戸の阪急になるのだ」というメッセージを外壁にも大きく掲げているのをご覧いただいているかもしれませんが、単に「神戸阪急」と名乗るだけではなく、神戸に根ざし地元神戸のお客様と素敵な神戸暮らしを一緒に作っていく百貨店を目指しています。
これからの百貨店には、だだモノを売るだけではなくて暮らしの提案やそれを実践する場の提供も機能として必要だと思っています。都市にいながら農業を楽しんでいる方が増えてきていると思うのですが、それも自然を身近に感じている神戸の人に似合う暮らし方だと思っていて、神戸阪急でも緑があふれる憩いの場があれば地域の方々に喜んでいただけるのではないかと考えています。今日はまさに六甲アイランドでお手本になるような都市農園を実践されているシェラトンファームさんにお話をお伺いできるのをとても楽しみにしていました。
シェラトンファームが出来たきっかけをお伺いできますか？

「地域の交流の場所」として都市農園をスタート

江副

シェラトンホテル職員の西橋さんが発起人です。ご自身が野菜ソムリエでもあり食に感度の高い方なのですが、「神戸も生産場所がたくさんあるので地元の方にその魅力を伝えていきたい」と考えていたんです。そこでまずはホテルの2階にシェラトンマルシェを立ち上げて、地元のものを中心にセレクトするお店を運営していました。農家さんとのつながりができる中でお店での消費だけでなく何か体験的に学んだり、地域の方と交流できる場所を作りたいとファーマーズマーケットをやったり都市農園やってみようとなったのがきっかけです。

2021年3月にオープンしたので、もうすぐ丸2年になります。屋上のスペースを活用して貸し農園16区画と他にも保育園が借りてくれている小さい区画もあります。利用者の方はほぼみんな農業初心者で、通われる頻度もそれぞれ。島内の方が７割ほどいらっしゃるので、朝晩に一回ずつ来て水やりをする人もいれば、島外から通う方は週１〜月１であまり手がかからない野菜を選んだりして工夫される方もいます。ありがたいことにオープン以来キャンセル待ちするくらい人気で、半年以上待たれている方もいらっしゃいます。

シェラトンファームの事務局兼コミュニティマネージャーの江副。

一イベント参加者から気がついたらコミュニティマネージャーに。

川畑

江副さんは事務局兼コミュニティマネージャーをされていますが、どのように関わりをスタートされたのですか？

江副

シェラトンファームをオープンする際に、地域の方と一緒にまずは雑草だらけだったこの場所の土づくりワークショップに参加させていただいたのがスタートです。
私も六甲アイランド出身なのですが、幼いころこの場所は綺麗な花壇が並んでいる場所で、周りをよく走り回っていた思い出のある場所なんです。昔は街全体がとても活気があったのですが、ここ最近は大企業が抜けて商業施設も無くなってしまったり盛り上がりがいまいちでした。シェラトンファームの場所も5年以上手付かず状態で、六甲ライナーから見ていても少し荒れたような感じになっていて気になっていました。社会人になってからは食に関わる仕事をしていたので都市農園にも興味があったのですが、たまたま六甲アイランドでそんな取り組みが進んでいることを仕事関係で知り合った神戸市職員さんから聞いて是非参加したいと思ったんです。
最初は参加者の一人だったのですが、「六甲アイランド出身で食関係の仕事をしていて、イベントも仕切れる人がいるらしいよ！」と運営側に話が広まって、２回目のワークショップの時には気がついたら受付係になっていました。笑

でも、自分の関心ごとである「食」という点で繋がっているし、当時からNPOで高齢者や地域の人の居場所作りをしていたりとコミュニティ作りにも興味があったので、地元での取り組みに関われる機会は、願ったり叶ったりでした。
そこから運営側で事務局やコミュニティマネージャーとしてかかわっていますが、シェラトンファームはホテル、農家さん、そして地元出身者の三者が一緒に運営をしているのがユニークな点で、だからこそいろんな視点での気づきから改善点を見つけたり新しい企画をたてられることが魅力につながっていると思います。

六甲ライナーからもよく見える場所にあるシェラトンファーム。

週末にプロの指導も。みんなで学んで、収穫したものは物々交換。

川畑	江副さんのやりたいこととシェラトンファームの目指したいことがマッチしていたんですね。実際に畑を見せていただくと、区画によって育てているものもそれぞれですね。利用者の方によって個性が見えて面白いです。
江副	本当にその通りで利用者さんの中にはお子さんやご友人と楽しんで育てることを目的にされていたり、色々な栽培方法を試しながら実践されるような方や病院に勤務されていて院内でできる園芸療法を模索している方などさまざまな方にご利用いただいています。先ほど初心者の方がほとんどだとお話ししましたが、ここでは西区で有機農園をされている農家さんたちが毎週土曜日に指導に来てくださっています。そこでみんな日々疑問に思っていることやうまくいかないことを相談することができるんです。野菜の保存の仕方、いちごの栽培のポイント、土の作り方など週によってテーマを決めて講習もしてくださいます。利用者さんは本当にみんな熱心なので指導いただいている農家さんたちもびっくりするくらいスキルが上がっていて。ここで都市農園を経験した方が副業でビルの屋上でもできるようなプランター菜園を広めたいと、神戸市が主催する農村地域での創業支援プログラムを経て事業を立ち上げた人もいるんですよ。
川畑	プロの方に相談できるのは初心者でも安心ですよね。利用者の櫻井さんはオープン当初からご利用されていると伺いましたが何故こちらに応募されたのですか。
櫻井	私自身街開きした頃からもう30年ほど近くのマンションに住んでいまして、シェラトンファームができるらしいと奥さんがネットで探して教えてくれたんです。「家から近いし、やってみたら」と。仕事は薬剤師をしていたのですが、ちょうど退職して少し病気をしていたので、お日さまに当たった方がいいなと思って取り組むことにしました。それに、農業は身体を動かすし美味しい野菜食べられるし、いいなぁと。

川畑

シェラトンファームを利用して何かご自身の中で変化はありましたか？

櫻井

朝と夕方に毎日ここにきて野菜の世話をしているので、自分自身が健康的な生活をおくれるようになったことですね。ズッキーニとかは実がなるのに受粉をさせる必要があるのでその時は朝5時起きなんですよ。朝早いので他の利用者さんのものも「私がやっておきましょうか？」と言ってお手伝いもしたりしています。利用者同士で育て方を教えあったり、お互いにできたものを物々交換をしたり協力してます。

あと、ご近所付き合いも増えましたよ。散歩しているご近所さんや職場の方にたくさん採れた野菜をあげたりするので、コミュニケーションのきっかけになっています。この前は冬瓜が２０個以上取れたので、半分くらいはシェラトンホテルさんの中国料理のお店にお裾分けで持っていきました。スープにしていただいたそうです！

櫻井の区画。１０種類以上の野菜やハーブが育てられている。

川畑	シェラトンホテルのレストランにもお裾分けをされたとはすごいですね！ご近所の方や利用者さん同士でも色々な交流が生まれていて素敵だなと思いました。シェラトンファームではただ、農業のスキルを学ぶだけではなく、地域での交流を生み、街の活力の拠点になっているのですね。櫻井さんご自身も毎日の農作業で心身ともにお元気そうですし、お話しされている笑顔がとても印象的でした。

後編では、シェラトンファームが利用者や地域の方々に起こしている化学変化を参考にしながらこれからの百貨店のあり方や役割をお話しします。

江副真文

一般社団法人SAZARE 代表
大学卒業後、全国で飲食店を運営する企業にてプロモーション・イベント企画制作の部署に所属。大阪の商業施設内のレストランフロアの運営ディレクターなどを務める。その後、神戸を拠点に「食」を通した人のつながりを生み出す活動を開始し、2022年2月にSAZAREを設立。六甲アイランドでの都市農園「シェラトンファーム」の運営や、ファンドレイザーとしてこども食堂の中間支援NPO法人の広報活動等にも従事している。