9月に入っても厳しい残暑が続いています。
唯一、茜色の空からすっと日が暮れるのが早くなり、季節の移ろいを感じさせてくれます。
そんな折、売り場の方に「滅多に入荷しないキノコが入っていますよ」と教えていただき、思わず手に取ったのが「香茸」。
香茸
初めて出会うきのこです。
鼻を近づけると、その名の通り豊かな香り。
私がこれまで触れてきたまだまだ数少ないキノコ類の中ですがまるでポルチーニ茸のように奥行きのある芳香を放っていました。
調べてみますと、人口栽培が難しく天然物しかない、たいへん希少なキノコなのだそう。
さらに、下処理や乾燥を経ることで旨味や香りが引き立ち保存可能ともありました。
キノコ類は基本的に洗わないといわれますが、松茸同様、土がついているものは、石づきの先を鉛筆を削るように薄くそぎ落とし、湿らせたペーパーや、さらしで汚れをやさしく拭き取ります。
香りがさらに豊かになることを願い、さっと下茹でして水分を取り、裂いて2日天日干し。
黒さが増し、すっかり乾燥で小さくなりました。
そしていよいよ、ゆっくりと戻した香茸を、食べやすく細切りにし戻し汁と合わせ出汁で煮て、鯛の切り身ともち麦で雑炊仕立てに。
…ただ、どうやら下処理での茹でた事とその秒数が長かったようです。
乾燥までは芳醇に香っていたのに、戻した香茸はその独特な香りがやや薄れてしまい、惜しい仕上がりに…。
しかしこれもまた、初めての食材との出会いの醍醐味。次は熱湯をかける程度の下処理で、香りを活かした一皿に挑戦してみたいと思います。
きのこは香りや、食感を楽しむものが多く、それぞれに個性があります。
松茸の上品な香り、舞茸の力強い風味、しめじや椎茸、マッシュルームの旨味。
秋はキノコを味わえる季節です。
そんなキノコ類と相性が良いのが「すだち」。
爽やかな酸味と香りが、キノコの旨味をすっきりと引き立て、残暑で疲れた食欲もかき立ててくれます。炊きたてご飯にもキュッ、焼いたキノコ類や、キノコの炊き込みご飯にキュッ。
汁物に一片浮かべても季節のやさしい酸味が広がります。
さて、香茸について売り場の方に伺ったところ、「また入るかもしれないけれど、何とも分からない」とのこと。季節の恵は売り場で出会う一期一会。
まだまだ暑さは続きそうですが、秋の味覚を探しに是非売場へ足を運んでみてください。
<プロフィール>
伊藤 由香 (いとう ゆか)
野菜ソムリエプロ
百貨店・野菜ソムリエ協会講師、レシピ提案等で活躍中。
長年西洋料理を学んだ後、野菜ソムリエに。旬の野菜を使った食のセミナーはもちろん、自身の子育て経験を生かしたレシピ提案など、親子でできる野菜・果物の特徴を活かしたメニューを得意とする。
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