梅雨の雨を飲んで旨くなる、
そんな言葉とともに語られる鱧の美味しい季節がやってきました。
そして6月は、みょうがの旬の始まりでもあります。
生産量が増え、みずみずしく香り豊かなみょうがを楽しめる季節。
「いいみょうがの日」の6月13日を迎え、私も高知県みょうがぞっこん5の一員として、この季節になると自然とみょうがに手が伸びます。
ぷっくりと丸みを帯びたみょうがは、蕾の部分にあたります。
つややかなピンク色と、みずみずしい張りのあるとても可愛い姿です。
このような美しいみょうが作りは、高知県の生産者の方々の栽培技術があってこそ。
全国一の生産量を誇る高知県では、一つひとつ丁寧に収穫されたみょうがが収穫されています。
みょうがの魅力は、何といってもあの爽やかな香りです。
香り成分のひとつであるα-ピネンは、マツやヒノキにも含まれる成分で、気分をすっきりとさせたり、リラックスを促したり、また食欲増進や消化を助ける働きなど期待されています。
ピンク色は、ブルーベリーにも含まれる抗酸化成分のアントシアニンによるものです。
先日、刻んだみょうがと味噌を合わせたミョウガ味噌を蒸しなすに挟んでいただきました。
ひと噛みすると、独特の香りと微かな辛味が広がり、初夏の風を感じるような心地よさ。
みょうがならではの魅力を実感しました。日本人に古くから親しまれてきたみょうがですが、野菜として本格的に栽培しているのは日本だけとも言われています。
さて、この時期にぜひ楽しみたいのが、鱧とみょうがの組み合わせです。上品なうま味を持つ鱧に、みょうがの清々しい香りが夏を映したかのよう。
みょうがは繊維に逆らって小口切りにすると香りがより華やかに立ちます。せん切りにすればシャキシャキ食感が際立ちます。
軽く火を通せば香りがやわらぎ、他の素材の旨みを引き立ててくれます。
今回は、そんな旬のふたつの素材を卵でふんわり包み込む卵とじにしてみました。
冷酒の肴としてはもちろん、ご飯にのせて丼にしても贅沢な味わいです。
因みに親子丼の玉ねぎをみょうがに替えるだけでもぐっと夏らしい丼になりますよ。
鱧とみょうがの卵とじ
【材料】2人分
- 鱧 120g
- みょうが 6個
- 卵 2個
- だし 200ml
- みりん 20ml(お好みで砂糖少々)
- 淡口しょうゆ 20ml
※麺つゆを表示通り希釈して代用しても!
【作り方】
- みょうがはせん切りにする。仕上げ用に1本は小口切りにする。
- 鍋に出汁を入れ煮立たせ、みりん、薄口しょうゆを加える。鱧を入れ火が通るまでさっと煮る。
- せん切りにしたみょうが2/3量を加え、強火にして溶き卵を回し入れる。半熟状になったら残りのみょうがも加え火を止める。
- 器に盛り付け小口切りのみょうがを添える。
みょうがを食べ過ぎると物忘れがひどくなる?は迷信。お釈迦さまの弟子で物覚えが悪く、自分の名前さえ忘れてしまい覚えられなかったという話からきています。
亡くなった後、そのお墓の周りに生えた草に、自分の名前を荷って苦労してきたことから「名を荷う」=「茗荷」と名付けられたという逸話が由来とされています。
また、古典落語では、みょうが尽くしの料理を食べさせて宿泊客の高価な荷物を忘れて帰ってもらおうと企てる宿夫婦でしたが、肝心のお代を受け取るのを忘れてしまうという、なんとも微笑ましい結末。作中にはみょうがのお漬物、炊き込みご飯、卵とじ、みそ汁、天ぷら、甘酒など、みょうが尽くしの料理が登場します。じめじめとした梅雨から本格的な夏へと向かう季節。旬の素材やみょうがを楽しみながら、心地よく過ごしたいものですね。
伊藤 由香 (いとう ゆか) 野菜ソムリエプロ
百貨店・野菜ソムリエ協会講師、レシピ提案等で活躍中。長年西洋料理を学んだ後、野菜ソムリエに。旬の野菜を使った食のセミナーはもちろん、自身の子育て経験を生かしたレシピ提案など、親子でできる野菜・果物の特徴を活かしたメニューを得意とする。